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Surikagaku gairon: Joho kagaku (Japanese Edition) PDF

190 Pages·2009·22.92 MB·Japanese
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情 ★報 ★科 ★学 数 理 科 学 概 論 桜 井 明 著 東京電機大学出版局 ま え が き  数理科学は自然や社会現象を数学化して研究する学問といえよう.こ れは,古 くからの大きな流れでいえば,ニ ュートン力学を典型とする数理物理的なもの と,ほ とんど同時代からの統計学的なものとがあるが,近 年になって,全 く新し い情報科学的なものが発足した.こ れらは,さ らに電子計算機の発達と相まって ますます発展するとともに,そ の範囲は日々広がり,以 前は数学とは全く無縁と 考えられてきた領域,た とえば文学や芸術といった分野にさえも広がりつつある.  本書はこのような数理科学の学問としての領域,そ の固有の方法,お よび,そ の分野などについての概観を与えることを目的とする.  そのため,ま ず第Ⅰ部において,こ の学問の対象である自然現象や社会現象に 存在する規則性,と くにその数学性について考察する.数 理科学の方法は,現 象 のこのような数学性に基づき,現 象を数学モデル化し,そ れによって現象を研究 することである.し たがって,こ の方法は,数 学モデルの作製とそれによる現象 の研究という2段階になる.第 Ⅱ部においては,こ のような方法の概略を述べ る.こ こでの要諦は,い ずれの段階においても,そ こに現れる数学は,原 則とし て,数 学自身としてより,問 題としている現象との関連において意味をもってい ることである.こ の点が数理科学と数学との違いであり,こ れが数理科学固有の 方法を示しているわけである.  第Ⅲ部において,数 理科学の各分野についての概観を試みる.数 学的性質をも つ現象はすべてこの科学の対象となるうるわけであるから,そ れは数限りなくあ り,ま た日々増えていて,こ れらをもらさず解説することは不可能に近い.し か し,そ れらの学問分野こそ千差万別であるが,数 理科学の方法という観点から見 れば,そ れらは大体において,上 記の数理物理,数 理統計および情報科学におけ る手法に基づくものが多い.こ の点を考慮し,こ れらについての記述を主とし, それを基準に考えることとした.な お,こ れらの諸分野での具体的な事項につい ては,諸 家の成書を随所に引用させていただいた.こ れらの多くはまた,参 考書 として巻末に一括して挙げさせていただいている.  数理科学全体を概観する試みとして,執 筆にあたっては最善をつくしたつもり であるが,至 らぬことも多いかと思われる.お 気づきの点等あれば,御 指摘いた だければ幸いである.  最後に,本 書は小冊子ながら完了までに長い年月を要した.そ の間,絶 えざる 御関心と御声援をいただいた東京電機大学出版局とくに植村八潮氏に心から感謝 いたしたい. 昭和62年 5月 桜 井  明 目 次 まえがき Ⅰ.数 理科学の基礎 1.数 理科学 とは  2 2.数 学と科学と工学  7 2.1 形式科学と経験科学  7 2.2  科学と工学  9 3.科 学の法則  11 3.1 科学法則の性格  11 3.2  確定的法則と統計的法則  14 4.自 然科学の発達  16 4.1  発達のメカニズム  16 4.2  発達のモチベーション  17 5.人 文科学と自然科学  20 6.科 学法則の数学性  24 Ⅱ.数 理科学の方法 7.現 象の数学化  30 7.1  数学モデル  30 7.2 数学モデルの種類  31 8.数 学モデルの構成  35 8.1 数学モデルの構成原理  35 8.2 数学モデル化の実際と簡易な例  36 8.3 経験式,最 小二乗法,無 次元表現  39 8.4 基礎方程式  45 8.5 基礎方程式に基づくモデルの構成  50 8.6  解の存在,一 意性,安 定性  56 9.数 学モデルによる現象の解明,近 似解法  62 9.1  現象の解明  62 9.2  近似解法のいろいろ  66 Ⅲ.数 理科学の実際 10.数 理科学の基礎的分野  78 10.1 基礎的分野の概観  78 10.2  数理物理学  79 10.3 数理統計学  95 10.4  情報理論  114 10.5 線型計画法  122 10.6  グラフ理論の応用  131 11.非 自然科学における数理科学  139 11.1  数理心理学  140 11.2  数理経済学  143 11.3 社会科学における数量分析  153 11.4  言語の数理科学  155 11.5  芸術の数理  157 12.複 雑な現象への応用  160 12.1 数理生物学,数 理生態学  160 12.2  交通問題  166 参考書  174 索 引  177 ◆第Ⅰ 部◆ 数理科学の基礎 l. 数 理 科 学 とは  数理科学とは,種 々の現象に存在する数学的性質を利用してその現象を研究あ るいは利用する学問といえよう.こ の場合の現象は自然現象に限らず,広 く社会 現象その他を含んでいる.  およそ,科 学は自然や社会の現象を対象とし,と くにその法則性を探求する が,そ れはしばしば数学性をもっている.こ のことを基礎とし,こ れによって現 象を数学化あるいは数学モデル化し,そ れについて数学を利用してその現象を究 明するのがその原理である.し たがって,そ れは数学自身ではなく,ま た,あ る 特定の科学の部門でもない.数 学性をもつ現象は何でもその対象となり,そ れに 数学を用いることになる.  このことの簡単な例として,気 体の体積はその圧力や温度の変化によって変わ るという現象を考えてみよう.この現象をよく調べてみると,つ まり,気 体の温 度,圧 力,体 積などを多くの場合に測った結果を総合し,た とえば温度が同じ データだけに着目すると,そ の体積と圧力とは大体において反比例しているとい う数学的性質が見られる(ボ イルの法則).こ れは,体 積をv,圧 力をpとする と,同 じ温度に対してpv=k(一 定)と 数学モデル化(こ の場合は数式化)さ れ, さらに,こ れを利用すれば,た とえば圧力pがどれだけになったとき体積vがど れだけになるかを,v=k/pと 「数学」を使って計算し予測することができる.こ れが,つ まり,数 理科学の考え方である. (1) 物理的科学,工 学  この例のように,数 学性はとくに物理的現象において顕著であり,こ のため, 物理学は古くから数学を基にして研究され,な かには量子力学のように,そ の基 礎の本質において数学的表現をとるものもある.こ のため,そ の数学的分野であ る数理物理学は,今 日の数理科学のひとつの典型と考えられている.ま た,工 学,と くに機械,電 気,土 木などの物理的工学では物理学の法則を利用すること が多く,そ のため,そ の数学的性質が広く応用される.と ころで,物 理学の法則 の数学モデルはニュー トンの方程式,マ クスウェルの方程式など微分方程式で記 述されることが多く,し たがって,そ こに使われる数学としては微分積分学の応 用が主な役割を演じてきた.以 前からのいわゆる「応用数学」の内容の大部分が これにあたるといっても過言ではない. (2) 数学の応用の拡大,抽 象数学の効用  ところで,数 学の応用は,上 のような場合に限らない.と くに,近 代数学は従 来の数や図形の性質の研究から離れ,そ れらを抽象化し公理化した.こ のこと は,数 学が単に数や図形や数式に対してのみならず,そ の広い範囲に対する応用 が開けたことを意味する.例 として群論を考えてみよう.そ れはひとつの公理系 を満足する集合として定義され,そ れを基礎として構成されている.と ころで, 普通の数はこの公理系を満足する性質をもっている.実 際に,こ の公理系は数の もつ性質のあるものを抽象化したものともいえる.し かし,こ れは,こ の公理系 を満足する集合でありさえすれば何にでも適用され,そ の定理や結果は自由に利 用できることになる.し たがって,無 限の応用が可能となるわけである.こ のよ うなわけで,数 学の応用は,す なわち,数 理科学の範囲は,上 述の物理学や物理 的工学に対するものからはるかに広がって,生 物科学などの他の自然科学の部門 はもちろん,心 理学,ま た,経 済学,社 会学などの社会科学の部門や,さ らには 政治学,文 学,は ては芸術など従来は考えられなかったような部門にも及んでい る.ま た,こ れらにおいては,既 存のある数学体系をそのまま応用するだけでな く,矛 盾のない公理系によって理論体系を構成するという抽象数学の考え方(公 理主義)そ のものが応用されることも多い. (3) 電子計算機の発達と数理科学  電子計算機の発達の数理科学への影響については言をまたないが,そ れには, 従来からの数理科学部門の拡大と新たな部分の創始という二つの面が考えられる.  第一の場合については,と くに物理的現象について顕著である.上 述のよう に,こ の分野の研究はここ数世紀来の科学の時代において中心的地位を占めてい る.多 くの法則が発見され,そ の適用範囲についてもほとんど確立されている. したがって,こ の分野のほとんどの現象はこれらの法則により説明され,予 測さ れうる.た とえば力学現象の多くはニュートンの法則で支配され,そ の数学化で あるニュートンの運動方程式を用いれば,何 十年後の惑星の位置も,月 ロケット の軌道も原理的には計算によって予測できるはずである.し かし,そ のための計 算は複雑かつ膨大となり,紙 と鉛筆の計算では何十年もかかるかもしれない.し たがって,以 前には,こ の種の問題は原理的には可能でも,実 際問題として不可 能とされていたが,電 子計算機の出現はこの状況を一変させた.こ のような事情 は,古 典的数理科学のもうひとつの分野である統計学においても起こった.こ こ でも膨大なデータの処理が可能になることによって大きく変貌した.  次に第二の影響については,電 子計算機のもつ新しい能力に対応し,そ れによ って新しい数理科学の分野がつくり出されるという,数 理科学に質的変化を与え るような影響をもたらした。具体的には,後 述のような情報科学の各分野などが このようにしてつくり出された新しい部門である. (4) 数学モデル  数理科学は,数 学は用いるが,数 学自身ではない.ま た,そ れは現象の説明お よび予測を目的としている以上,科 学といえるが,特 定の科学の部門ではない. それはむしろ,科 学探求のひとつの有力な方法であり,数 理科学の各部門はその 方法のその部門への適用と考えられる.と ころで,こ の方法の核心をなすのが現 象の数学化あるいは数学モデル化である.そ れは,あ くまで現象に立脚し,そ れ のもつ数学性を抽出する作業である.こ の場合,あ る現象について数学性が常に

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