イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 主幹 Anne Regourd テクニカルスタッフ (CmY 19) :編集担当。 Anne Regourd :オンライン化担当。 Peter J. Nix 連絡先 [email protected] ウェブサイト http://www.cdmy.org/ ISSN 2116-0813 表紙:ジャナド大モスク 年 月 日撮影 (2008 8 6 ) © Hélène David-Cuny イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 『イエメン写本年報』 19 馬場多聞 九州大学 訳 ( ) イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 『イエメン写本年報』 19 (Chroniques du manuscrit au Yémen n° 19) 年 月 2015 1 年 月に次号刊行 (2015 7 ) 目次 イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 目次 出来事 ソルボンヌ大学アフリカ世界研究所博士課程 Olga Andriyanova ( Institut des mondes 、 、 、 africains (IMAf) Université Paris 1 Panthéon-Sorbonne) Anne Regourd Jan スペイン国立研究会議 Thiele ( Consejo Superior de Investigaciones Científicas (CSIC) 、マドリード ) 頁 5-41 によるコラム Jan Thiele プロジェクト ‘Digital Bab-al-Yemen’ 頁 42-44 論考 編 (Anne Regourd ) 馬場多聞 九州大学、日本 ( ) イエメン写本や史料に主として依拠した、日本語で書かれたイエメン史研究 (1964-2014) 頁 45-66 フランス研究所 Muhammad ‘Abd al-Rahim Jazim ( Centre français d’archéologie et 、サナア、イエメン de sciences sociales ) ジャナドモスクのワクフ写本 地名・人名目録については準備中 ( ) 頁 67-143 5 出来事 イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 出来事 年 月~ 年 月 (2014 7 2014 12 ) 訃報 教授 Sándor (Alexandre) Fodor (1941-2014) ブダペストのエトヴェシュ・ロラーンド大学 においてセム語文 (University Eötvös Loránd) 献学やアラビア語学部門の名誉教授であった の逝去の知らせを、 Sándor (Alexandre) Fodor 驚愕と深い哀悼をもって私たちは受け取った。彼の逝去は、 年 月 日のことであっ 2014 8 2 た 。 は、 年 月 日、ブダペストにてプロテスタントの一家のもとに生を受けた。 S. Fodor 1941 11 6 彼は信心深かったが、イスラームとユダヤ教という他の二つの一神教に強い関心を寄せた。 とりわけ青年期以降には様々な宗教が混合した文化などに興味を持ち、リセでは歴史学の課 程やアラビア語学の課程を受講した。アラビア語学の教授たちに加えて、 Károly (Karl) や 、そしてハンガリー Czeglédy (1914‒1996) Abd al-Karim Julius Germanus (1884‒1979) のエジプト学者である が、彼の学問上の最初期の歩みに決定的 László Kákosy (1932‒2003) な影響を与えた。 と の関係は徐々に真に友好的なものとなり、ひとつのテ S. Fodor L. Kákosy ーマにそれぞれが異なる角度からアプローチするに至るまでに、二人は結び付いていった。 このことを示すかのように、 によって著された多くの論考は、ピラミッドに関する S. Fodor 伝承の起源にまつわる諸事を取り扱っている。 は、その学生時代より亡くなるまで、セム語文献学とアラビア語学に結び付けられ S. Fodor ていた。長い経歴の中で彼は、ハンガリーのアラビア語学者をムスリムたちの豊富な歴史や 文化へ誘ってきた。彼は部門長を務めるとともに 、オリエント研究所所長 (1984‒2006) 、 や国際関係学部の副学部長 (Oriental Institute 1992-2006) (Vice-Dean of International 、 、人文学部の学部長 、 を歴 Relations 1990-2000) (Dean of the Faculty of Arts 2000-2001) 任した。 彼はまた、ギュラ のソシエテ・チョマ や、特 (Kőrös) (Alexander Csoma de Kőrös Society) 派員として籍をおいたカイロのアラビア語アカデミー な (Academy of the Arabic Language) ど、多くの組織に所属していた。アラブ文化や、イスラームの宗教や文明に関する研究によ って、エジプト・アラブ共和国より彼は勲章を受けている。 は、アラビア語学者や歴史学者、文献学者としての確立された専門知識をもって、 S. Fodor 年にエジプトに滞在した。これはアラブ諸国における彼の初めての長期滞在であり、 1965 彼の学者人生の中で重要な時を過ごすこととなった。彼はそこで、アラビア語の口語やイス ラーム、そしてその文明について習熟した。長期にわたる個人的なつながりを結んだが、そ 6 出来事 イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 れは彼の愛想のよさによるものであった。彼は第二の祖国であるエジプトにて、イスラーム の民衆の信仰や護符、呪術に情熱を抱くに至り、護符や呪術に関する写本の収集をはじめ た 。それらは、彼の豊富なコレクションの一部を成すに至った。 年、アラブ研究者・イスラーム研究者によるヨーロッパ連合 1988 (Union européenne des はブダペストにて、「イスラームの民衆文化 」という主題 arabisants et islamisants (UEAI)) のもと、第 回大会を開催した。 はそこで、護符や、呪術に関する書籍や写本、 14 S. Fodor 呪術的な行為、香炉、ロザリオなど、中東や北アフリカで収集した自身のコレクション 100 点の展示を行った。 のコレクションの一覧が S. Fodor The Arabist: Budapest Studies in Arabic に収載されているが、この学術雑誌は彼が創刊し、亡くなるまで貢献していたもの 2 (1990) である。この展覧会は、民衆の宗教空間 それは の研究を反映したものであった ― S. Fodor ― を引き上げ、 中東のムスリムやユダヤ教徒、キリスト教徒の民間信仰の共通性を示し、 (i) イスラーム世界において古代の概念や実践が継続して生きていることを示し、 護符 (ii) (iii) の誕生から衰退に至るまでの道程を、材料や製造など、入手できるあらゆる要素をもとに提 示するといった、彼の目標を表すこととなった。三つの一神教が共通した遺産を共有してお り、特に呪術などの未だ確立されていない研究領域に含まれる民間信仰や実践のうちにその ことを理解できるものと、 は堅く信じていた。彼の仕事は、イスラームの民衆に関 S. Fodor する国際的な研究の最前線へ学者たちを誘うこととなった。 彼はアラブ世界を遍歴し、 年にはサナアを、 年にはアデンを訪れている。 年 1975 1985 1990 代にはクウェートのターリク・ラジャブ博物館 を訪れ、呪術に関す (Tareq Rajab Museum) る写本や現物の目録の作成を企図した。以来、彼は毎年六週間を彼の地で過ごしたが、この 仕事は達成されないままでいる。 未来へ向けて、 は多くのプロジェクトを構想していた。特に彼の人生において重要 S. Fodor な企てである、一神教の統一の究極の証拠と彼がみなした呪術書『アダムの書』の編集に、 身を投じていた。 彼の未完成の著作やプロジェクトが適切な導き手を見出すことを、願ってやまない。 Kinga Dévényi コルヴィヌス大学 、ブダペスト (University Corvinus ) 7 出来事 イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 ブダペストのエトヴェシュ・ロラーンド大学の の書斎 Alexandre Fodor ブダペストの より提供 © The Arabist 業績一覧 抜粋 ( ) « The Origins of the Arabic Sūrid-Legend », Zeitschrift für Aegyptische Sprache 96, 1970, 103- 頁 109 . « The Solar Bark in a Muhammadan Miʿrāj Text », Studia Aeyptica I. Recueil de textes dédiés à ブダペスト 頁 V. Wessetzky, (Budapest), 1974, 83-87 . 編 « Malḥamat Dāniyāl », Gy. Káldy-Nagy ( ), The Muslim East. Studies in Honour of Julius ブダペスト 頁 Germanus, (Budapest), 1974, 85-159 . 編 « The Use of Psalms in Jewish and Christian Arabic Magic », É. Apor ( ), Jubilee Volume of ブダペスト 頁 the Oriental Collection 1951‒1976, (Budapest), 1978, 67-71 . « The Rod of Moses in Arabic Magic », Acta Orientalia Academiae Scientiarum Hungaricae 32, 頁 1978, 1-21 . 頁 « A Group of Iraqi Arm Amulets », Quaderni di Studi Arabi 5-6, 1987-1988, 259-277 . 頁 « A Popular Representation of Solomon in Islam », The Arabist 1, 1988, 43-56 . Amulets from the Islamic World. Catalogue of the Exhibition held in Budapest, 1988, The Arabist: Budapest Studies in Arabic 2, 1990. « A Talismanic Chart in the Tareq Rajab Museum, Kuwait », Quaderni di Studi Arabi. Studi e 頁 Testi 3, 1999, 93-111 . 8 出来事 イエメン写本年報 年 月刊行 /CmY 19 2015 1 共著 S. Fodor, Jehan S. Rajab et al. ( ), The World of Islam: the Arts of the Islamic World from ケストヘイ ヘリコン城博物館 the Early 18th to the End of the 20th Century, (Keszthely), (Helikon Castle Museum), 2002. « Magic Bowls, Cosmology and Divination », Proceedings of the 20th Congress of the Union 頁 Européenne des Arabisants et Islamisants. Part 2, The Arabist 26-27, 2003, 211-234 . 頁 « An Arabic Version of Sefer Ha-Razim », Jewish Studies Quarterly 13/4, 2006, 412-427 . ケストヘイ ヘリコン城博物館 Sufism and Magic: Amulets from the Islamic World, (Keszthely), エトヴェシュ・ロラーンド大学 (Helikon Castle Museum), (Eötvös Loránd University), 2009. « An Arabic Version of the Sword of Moses », Gideon Bohak, Yuval Harari and Shaul Shaked 編 ライデン ( ), Continuity and Innovation in the Magical Tradition, (Leiden), E.J. Brill, 頁 2011, 341-386 . « A Magical Banner with the Representation of Paradise from the Tareq Rajab Museum in Kuwait », Proceedings of the Colloquium on Paradise and Hell in Islam, Keszthely, 7-14 頁 July 2002, Part II, The Arabist 30, 2012, 11-36 , pl. II-VI. 写本学、目録、図書館史、知の伝達、写本史、製本技術、遺産 、デジタル化、保護、保存 年 月、ベイルート。 監修 2014 2 Christian Müller, Murielle Roiland-Rouabah ( ), Les non-dits du nom. Onomastique et documents en terres d’islam. Mélanges offerts ベイルート تويرب à Jacqueline Sublet, (Bayrūt ), Presses de l’Institut français du Proche-Orient, 2013. ISBN : 9782351591673. ISBN électronique : がインターネット上に掲載された。 9782351595190 による 手書き写本にもとづく 世紀イエメンの知識人の図書館 Arianne d’Ottone « 13 (« La bibliothèque d’un savant yéménite au xiiie siècle d’après une note manuscrite autographe ») 頁 が含まれる。 (67-84 ) http://books.openedition.org/ifpo/5697. 年 月、エジプト。 2014 3 ‘Iṣām Aḥmad ‘Īsawī, « Ḫidamāt al-watā’iq fī al-maktabāt al-‘āmma al-sa‘ūdiyya : ru’ya mustaqbaliyya », Cybrarians Journal, vol. 34, が刊行された。 mars 2014. ISSN : 1687-2215 著者は、サウジアラビアの公立図書館 実際にはすべての図書館 が所有している歴史文書 ( ) や写本のコレクションがその読者のために保障されるような、種々のサービスを奨励してい る 一般的なオリエンテーションや、古代文字の講義の補助、デジタル化、写本の修復と保 ( 護など 。この雑誌は、エジプトに拠点を置くサイブラリアン・文献情報アラビア語ポータ ) ル の協力で出版されており、インタ (Arabic Portal to Libraries and Information Cybrarians) ーネット上で閲覧可能である。: 9
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