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Dr. Takasi Tuyama (1910-2000) PDF

3 Pages·2001·0.24 MB·Danish
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56 植物研究雑誌第76巻第l号 平成13年2月 いるため,時がたつとテープの縁がよごれる A method of mounting technique of herbarium うえ,浮き上がった枝を抑えるような,力が specimen by heat -sealing is established using 常時かかる箇所では徐々にはがれてしまうの polyethylene laminated paper tape and soldering で,標本室用としてはおすすめしかねる. iron. Materials and tools are described. 以上のとおり,ヒートシールによる標本貼 り付けの問題点はなくなった.テープ原紙の 参考文献 入手に多少難点があるが,工場出荷の原ロー 金井弘夫 1972. ヒートシールによる標本貼付. ルを製紙業者から購入したとしても,量にく 植物研究雑誌47:120-121. らべて価格はとんでもなく安いものなので, 一一1974.おしば標本の新しい貼付法.植物研 究雑誌40:89-93. 共同購入すればよい.筆者のところにはジャ 一一一 1974.新しいおしば貼付用具ラミントンに ピロン PC5-1415の買い置きがあるので、希 ついて.植物採集ニュース (75):35-36. 望者は連絡されたい。前報について,外国か 一一1985.おし葉を貼るはなし.国立科学博物館 ら問い合わせがあった.標本貼付法はどこで ニュース (198):3-4. も悩みがあるようなので,公私を問わず普及 一一一 1998.おしば標本貼り付け用ヒートシール テープの自作法.植物研究雑誌73:52-53 することを期待する. (184-)・・小金井 引用した文献のほか,貼り付け法等を述べ TELIFAX た報文を示しておく. 追悼 津 山 尚 博 士 Dr. Takasi Tuyama (1910-2000) 2000年10月16日早朝,腸疾患に伴う心不全 のため急逝された.津山 尚博士は1910年11 月9日のお生まれ.広島高等学校から1934年 東京大学理学部植物学科を卒業,大学院を経 て1939年助手, 1941年資源科学研究所研究員, 1946年日本女子大学助教授, 1950年お茶の水 女子大学教授,以後65才の定年退職までその 職にあった.また 遅くとも 1952年(それ以 前は編集員の名が記されていない)から1995 年の間植物研究雑誌の編集員, 1975, 1976年 には日本植物分類学会会長として,わが国の 点 植物分類学の発展に寄与された. 寸 博士の研究フィールドは小笠原諸島にはじ まって, ミクロネシアから東亜熱帯圏におよ J び,第二次大戦前は中国,南洋群島,ニュー Y ギニアと調査の範囲を拡げておられたが,敗 ゐ 戦によって志を絶たれた.原爆で多くの肉親 を失ったことと共に,痛恨事だった.しかし 熱帯圏調査の意欲は失わず, 1955年にはタイ から単身インドシナに調査旅行を行い, しば 津山尚博士と署名 1995年. らくの間消息不明を伝えられる熱意を見せて Dr. Takasi Tuyama (1910-2000) おられた.東京大学のヒマラヤ植物調査には, February 2001 Journal of Japanese Botany Vo .176 No. 1 57 第一次(1960)のシッキム,第二次 (1963) たのだ.マッチは不要というヘビースモーカー の東ネパールに参加され,東部ヒマラヤのフ で,絶えず、煙を吹き出していて,隊で用意し ロラ研究に協力された.植物群としてはラン た煙草はほとんど津山用となった.晩年には 科をとくに多く扱われ, 1970年代からはツバ 断煙しておられたが….そもそもこんなに手 キ属を集中的に研究された.資源植物事典 間どったのは,通関事務の何たるかを知らな (1949)にも,多くの分担執筆がある.また, い私が作った書類が役に立たなかったことに 日本植物分類学会選定の「科の和名」は,津 原因があるのだが津山さんはそれについて 山博士が作られた原資料を出発点としたもの 一言も口にしなかった. である. やっとのことで通関が終わり,津山さん, 津山博士は私にとって師とよぶべき年齢差 村田さん,私の三人でジーフ。を駆ってダージ があるのだが,博士は「先生jと呼ばれるの リンまで700キロを走ることになった.前夜, を好まなかったし,私の方もなんとなく仲間 邦人宅に招ばれて通関打ち上げのお祝いをし 的感覚でおつきあいしていた.それほど気分 てもらったのだが津山さんは安心したのか, 的には若者だ、った.だから以下は津山さんと 大して呑まないのにダウンしてしまった.慣 呼ばせていただく. れない通関の仕事疲れで,体調を崩していた 私の津山さんについての強烈な印象は, のだ.調査の日程からいって一日も無駄にで 1960年の第一次ヒマラヤ植物調査に始まる. きないので,車の後席にかかえこみ,走りだ そのときまでは大したおつきあいがあったわ した. ところが彼は,フラフラのくせに沿道 けではない.分類研究会という会合があって, の景色に目を光らせ,少しでもかわった植物 ときどき顔を合わせてはいたが,学生の私に が目に入ると「止まれ!Jと大声で、叫ぶのだ、っ は,議論に加われるような力はとてもなかっ た.こちらも勉強になるものだから,はじめ た.たまたまほとんど初顔合わせの二人が通 のうちは一々つきあっていたが,気がついて 関の仕事を担当し カルカッタの安ホテルで みたら半日たっても予定の 1/3も消化して 村田 源氏と三人で40日を同じ部屋で過ごす いなかった.以後は彼が疲れて眠り込んだの ことになったのだ.帰りの通関でも一ヵ月ほ を幸い,距離をかせいだ.夕方になると役人 ど同室した.それに加えてシッキムの山中で の宿泊施設であるダクパンガロウに乗り付け, は,物資のやりくりの都合で,二人は一週間 チョキダル(番人)に話しをつけて泊まりこ ほど同じテントに寝た.だからご家族をのぞ んだ.本当は前もってカルカッタで政府の観 いては,私は津山さんと最も長く一緒に暮ら 光案内所に申請して,許可証をとっておかね した人間だと思っている. ばならないのだが これも津山さんの堂々た 津山さんは片時もじっとしていなかった. る態度と弁舌のたまものだった.ダージリン 炎暑のカルカッタでの通関事務は,迷路のよ までの四日間は,熱帯植物にくわしい津山さ うなお役所や広い港のドックヤードを,書類 んのおかげで,いろいろな植物を観察するこ を追ってグルグル歩きまわる退屈な作業で, とができた. ホテルに戻るとクタクタである.初体験で要 調査行は雨期が始まっていて,ほとんど毎 領がわからないから無理もない.それなのに 日ショボショボと雨が降った.津山さんは相 津山さんは少し時間ができると,市内のあち 変わらず探究心旺盛で,丹念なノート付けと こちを見てまわったり,大学の研究室を訪ね 写真撮影のために,隊の行動予定と合わなく たり,タクシーをやとって郊外の植物採集に なることがときどきあり 隊長の原 寛先生 出かけたりするのだ.インドではそういう時 と調整の談合をやっていた.二人はー才違い 間が結構あった.連休にぶつかったときには, の同期生で,お互いに気心の知れた間柄だ、っ 体調が悪いにもかかわらず泊まりがけの旅に たので,日本でやるのと同じ気分の議論だ、っ でかけた.ところが帰途は切符がとれず,駅 たのだろう.私にとってそれを傍観すること 長と日印国際交流の意義にまで及ぶ大論争を は,はじめての海外調査のテンションで,自 やったあげし座席を獲得した.議論好きの 問的になるのを和らげるよい薬だったのだと インド人も,津山さんの勢いにはかなわなかっ いうことを,後になって気づいた.津山さん 58 植物研究雑誌第76巻第l号 平成13年2月 は,わざとそういう機会を作ってくれていた い出Jは,この線に沿った序章だ、ったのだ. のかも知れない. 最近では,あまり顕彰されていない植物研究 近頃は,原稿のワープロ化の一部を私が引 者の評伝を書くのだと,資料を集めておられ き受けていたので,電話でお話しすることが たようだが,不発に終わってしまった. ときどきあったが 自分がやりたい課題を次々 前日まで、平常の生活だ、ったが,不調を訴え と口にされ,止まるところを知らなかった. てからわずか9時間だ、ったという.故人の固 他の方々にも,様々な抱負を語っておられた い遺志で,葬儀はごく近親者のみにより無典 という.私も,津山さんのような戦前の世代 礼で行われた.何ものにもとらわれず,自由 でしか知らないいろいろなことを,是非とも に生きた津山 尚博士89歳の,楓爽たる退場 文章に残すよう煽動していた.日本植物分類 ぶりだ、った. (金井弘夫) 学会50年の歩みに書かれた「遠いあの頃の思 新刊 口織田秀実:鈴懸の径から 334 pp. 1999. チパナモドキ,フヨウとムラサキ,泰山木,紫 文芸社KK. ¥1,600+税. 陽花,梧桐,蘇鉄,アケボノスギ,セントポー 著者は動物発生学を専門とする学者である リア,クリスマスツリー,柊など,扱う植物 が,植物学にも造詣が深く,長年に亘って は約20種に及ぶ.ある時は正確な自然誌であ 培ったナチュラリストとしての鋭い観察眼と るが,時に文化誌的であり,またある時は教 溢れるばかりの愛情をもって,身近な自然を 育的見地からの語らいになるなど,読む者を 見つめ,数々の優れたエッセイをものにして して飽きさせない.自然に注ぐ著者のこまや r きた. 鈴懸の径から」はそれらをまとめて上 かな愛情が全編に溢れる佳編である. 梓したもので,全編は 5部から成り,第 I部 (千原光雄) は「植物随想Jで,著者が勤務した立教大学 池袋キャンパスで接した樹木や花について文 口佐藤 卓:スイスアルプスの植物 80pp. 化誌的に綴ったもの,第 II部は「動物随想、j 2000. 自費出版.¥1,200(送料共). で,自身の研究材料淡水産コケムシにまつわ 著者の手になる, 114種の代表的な高山植 るエッセイを主に収めであり,第 III部は 物の美しいカラー写真が収められている.最 数々の「旅行の思い出」の記を収録し,第 IV 後に日本の高山帯と比較した説明がある.A 部は「恩師への追慕Jを語り,第 V部は少年 5版で薄手なので,スイス旅行の参考になる 時代の体験的記憶を綴った「回顧Jを収める. だろう.入手についての連絡先は次のとおり. 第I部の「植物随想、」では,銀杏の雌雄,ラ 〒939-1・・富山市・・・・・・佐藤卓. イラック, ドッグウッド,アイピー,スズカ (金井弘夫) ケ,百合の木,マロニエ,定家葛,生垣のタ

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