A Newly Recorded Spider from Japan, Atypena formosana (OI, 1977), comb. nov. (Linyphiidae).

4 Pages·1992·0.41 MB·English

by  Sachiko Tazoe

Acta arachnol., 41(2): 211-214, December 23, 1992
日本新記録種 タイワンコブヌカグモについ て
田副 幸子1)
Sachiko TAZOE1 A Newly Recorded Spider from Japan, A ty pena
f ormosana (01, 1977), comb. nov. (Linyphiidae )
Abstract Callitrichia f ormosana Oi, 1977 is newly recorded from Japan,
based on the specimens collected from Iriomotejima Island, Okinawa Pref. It
was described by Oi (1977) under the genus Callitrichia which was synonymized
with Atypena by JoCQUE (1983). This synonymy is accepted and Atypena
f ormosana, comb. nov. is proposed.
は じめ に
西表島(沖 縄県八重山郡竹富町)に て採集された標本を σαZ砒物 配αノ加〃zo5απα と同
定できたので日本新記録種として ここに報告する.OI(1977)は この種を σαZZ露沈 痂α属
のもとに新種記載 したが,所 属について も検討 したので,そ の結果 も合わせて報告する.
このクモは台湾で採集され,OI(1977)に よって σαZ砒錫o痂αノb7物5伽 α として新種発
表された.今 回検討した西表島からの標本は,当 初OI(1977)の 記載内容(雄 触肢構造の
一部)と に差異がみられたため別種と考えた.し かし,そ れ以外の点については酷似 して
いるため国立科学博物館に所蔵されている α ノbr㎜5α ηα のsyntypesと 比較検討した結
果,脛 節前端の突起形態について原記載に誤 りがあり,同 種 と判断できた.
0α脇 沈 痂α属はFAGE(1936)が 東アフリカ産の(Σ 加〃z功プを基準種として新設 した
が,そ の後 この属に関しではHoLM .(ユ962),WuN曲kL重cH(1978>;Jo6Qu喬(1983)等 が
種々の見解を示している'.こ のうちJocQu庖 は σ4砒7ゴ6配 α属をSI:MoN(1894)が 記載
したA砂 ρ例α属のシノニムとみなしている.こ れらを1もとに検討を試みたが,今 の段階
ではJocQ碗 が再記載 したA砂 ρ6ηα属の基準種であるA5砂 θr6臨03αSI:MoN,1894
の特徴が(Σ ノb筋05απα によく似ているため,JOCQU面(1983)の 見解を支持 し,こ の種
の所属をA砂 ρ6ηα 属に変え,HoLM(1962),WuNDERLIcH(1978)等 の争 点 で あ る
0840此oブ 礁 属との関係は今後の研究課題としたい.
また,斎 藤(1990)は α プ加伽5απαが ・4.5妙8ro碗05α に酷似することを指摘 してい
るが,雄 の触肢構造の栓子部分の形態に明らかな違いが認められるため,両 者は別種と考
えられる.
1)〒233横 浜市港南区日野南3-6-405
3-6-405,Hinominami,Kounan-ku,Yokohama,233Japan
↓992年11,月16日 受理
z12 田副 幸子
和名はすでに発表されているタイワンコブヌカグモを用いる.
なお,本 稿をまとめるのに当たり,日 頃ご教示頂き,貴 重な標本をご恵与くださった谷
川明男氏,本 稿の御校閲をいただいた斎藤博氏,国 立科学博物館の小野展嗣博士に厚くお
礼申し上げる.
記 載
、髄ypeη α'ormoε αη1α(OI,1977),comb.nov.
タ イ ワ ンコ ブ ヌ カ グ モ
(図1-10)
CallitrichiaformosanaOi,1977,Actaarachnol.,27:23-26,figs.1-5.
Oedothoraxformosanus:BRIGNOLI,1983,Cat.aran.,p.349.
所 検標本Syntypes:2♂ ♂2♀ ♀,``Tai-chung,Taiwan,"24-X-1969・ 大熊 千代子
採集(NSMT-Ar2732).
その他 の標本:1♀,古 見,25-X∬ 一1985.1♂,古 見,27-X皿 一1985.1♂,浦 内,28-XH-
1987.8♀ ♀,白 浜,31-XH-1988.6♂ ♂5♀ ♀,古 見,27-XH-1989.1♂,星 立,28-X卜
1989,1♀,古 見,1-V-1990.5♀ ♀,古 見,24-XH-1990.14♂ ♂8♀ ♀,白 浜,3-1-
1991.1♂,古 見,7-14991.い ずれ も西表島 にて谷川明男採集.
測 定[単 位はmm.西 表島か らの標本 に基 づ く.syntypesの 測定値 はOI(1977)参 照].
体 長 ♂1.57-1.82,♀1.86-2.71.背 甲長♂0.75-0.86,♀0.75-0、99.背 甲幅 ♂0.61,
♀0.55-0.78.腹 部 長♂0.89-1.07,♀1.20-1.88.腹 部幅 ♂0.39-0.74,♀0.91-1.51.
歩脚長 は表1の とお りであ る.
表1.A砂 ρ6ηα!b㈱05α ηα(OI,1977)タ イワンコブヌカグモの歩脚長(星 立産1♂/古 見産
1♀;単 位はmm).
特徴.雄.頭 胸部は淡黄褐色で放射溝はやや濃色,前 中眼後部よりほぼ垂直に隆起し,
さらにその上に左右2っ の隆起物があり後中眼をのせている.額 は前中眼直径の約2倍,
前中眼後部から隆起頂点まで前中眼直径の約4倍 で,後 側 ・中眼闇には溝が,前 中眼域付
近から後方にかけては毛束がある(図5).上 顎の前牙堤には4歯,後 牙堤には3歯 また
は2歯 をそなえる.胸 板は褐色で周縁はさらに濃色となる.前 列眼は上から見て後曲,前
中眼は前側眼より小さく,前 中眼間は前中眼の半径より狭く,前 中眼と前側眼間は前中眼
の直径分離れている.腹 部も淡黄褐色だが,や や頭胸部より白っぼく3対 または4対 の黒
色葉状斑がある(図1,4).こ の葉状瑳は一部側面かち腹面後方にまでのびている個体も
ある.歩 脚は黄褐色で全脛節背面には各1本 の刺毛が,第4脚 躊節には聴毛があり,TmI
日本新記録種タイワンコブヌカグモについて 213
図1-10.、4砂 ρ6παノbプ溺05αηα(OI,1977)タ イワンコブヌカグモ.1.雄 背面.2.雄 左
触肢.3.雄 左触肢背面.4.雄 腹部背面.5.雄 頭胸部側面.6.雄 左触肢栓子腹面.
7.雌 外雌器.8.雌 頭胸部側面.9.雌 腹部側面.10.雌 背面.(ス ケールは0.2mm.)
は0.71-0.80で ある.触 肢先端の構造および脛節背面先端を図2-3に 示 した.脛 節背面
先端については,OI(1977)の 原記載では3つ の突起が描かれてお り,西 表産の標本とは
大きな違いがあった.し かし,syntypesを 再度検討 したところ,中 央を除 く左右の突起
が実は突起ではなく,薄 い透明な膜でつながってお り,そ の一部が突起のように見えるこ
214 田副 幸子
とがわかった.こ の膜は触肢側面にものび,paracymbiumに も一部被さる程の長さと幅
がある.OI(1977)の 図ではこの膜が影のように描かれている.触 肢腹面か らみた栓子部
分が図6で ある.斎 藤(1990)は 本種とA.5砂 θr6∫あ05α の類似性を指摘 しているが,
JOCQU丘(1983)が 再記載 した ・4.5砂6π 脇05α の栓子部分の図と比較すると,栓 子と突起
の方向,突 起の有無に違いがあるため,両 者を別種と判断した.
雌.頭 胸部および腹部の色彩は雄に似るが,OI(1977)の 原記載では腹部葉 状 斑 が な
く,syntypesで も見 られなかったが,西 表産の標本にはいずれも雄同様の3〜4対 の黒
い葉状斑があ り(図10),そ の葉状斑が腹面にまでのびている個体 もある(図9).頭 胸部
には雄のような隆起物はなく前中眼後方よりわずかに 隆起する(図8).上 顎の前牙堤に
は4歯,後 牙堤には3歯 をそなえる.前 列眼は上から見て後曲,前 中眼は前側眼より小 さ
い.前 中眼間は前中眼半径より狭く,前 中側眼間は前中眼半径ほど離れている.後 列眼は
上から見てわずかに前曲,後 中眼と後側眼はほぼ同 じ大きさで前中眼よりやや大きい.後
中側眼間は前中眼の直径分離れている.歩 脚は黄褐色で雄同様すべての脛節背面に1本 ず
つ刺毛があり,TmIは0.70〜0.80で ある.外 雌器は図7の とお りである.
その他の点についてはOI(1977)を 参照されたい.
摘 要
西表島から採集された標本を σαZ伽r∫o痂α ノb辮05αηα(タ イワンコブヌカグモ)と 同
定できたので日本新記録種 として 報告する.こ の属については 検討すべき点が 多いが,
JOCQU重(1983)の 見解を支持 し,こ の種の所属をA砂 ρ8ηα属とする.属 の和名はコブヌ
カグモ属としたい.
f z iJ
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